日々の泡

なくならないゴミ


要らないものを全部捨てたらゴミ置き場が夢の島のようになり、
近所に住む大家がぐだぐだ言いながら出てきて、
結局トラックを呼ぶはめになった。

やっとせいせいしたと、外の自動販売機でジュースを買って帰ると、
家のドアに大きく、ヤリマン注意、とかかれていた。

誘われば断らないのは事実ではあるけれど、
喜ばれこそはすれ、注意される筋合いは無いのに、と思いつつ、
同情するフリをしつつ笑いをかみ殺している大家と一緒に、
マジックリンを三つ使い切ってようやく消した。

大家に頭を下げると、マジックリンの値段を、
次の家賃につけておくからよろしく、と返された。
悪趣味な馬鹿でかい家に住んでいるのに、
金持ちがケチというのは本当だなと思ったが、
ケチだから金持ちになるのかと思い直し、
自分の金の使い方を考えたら納得がいった。

部屋はずいぶんとガランとしていて、
家具の下のホコリが区画整理でもしているかのように
角張って四角をいくつも描いていた。
昔体育館で掃除をしたような大きな黄色いモップで
全部いっぺんに拭きとりたかったがもちろんそんなモノはなく、
クイックルワイパーさえ切れていたのでトイレットペーパーを
何度も切っては水に浸して拭き掃除をする羽目になった。

ゴミ箱に捨てていたら危うくまたゴミ袋がふえるところだったが、
トイレに突っ込んで何度も流して、ちょっと詰まって、
風呂桶に水を溜めてどうにか流した。
ゴポっという音と共に、
まとまったテッシュが流れるのは、ちょっと爽快だった。

ガランとした部屋の中でビールを一本ごくごくと飲んで、
空き缶を灰皿にタバコをゆっくりと吸った。

カーテンも捨てた窓に自分がうつっている。
いつの間にか夜になっていることに気づいた。

男の匂いのしない、新しい布団でも買って、
みたくもないテレビを見ることもなく静かに、
誰にも邪魔されずに、一人だけの夜を過ごしたい。

そう思って大きく伸びをした瞬間、
携帯がけたたましく鳴る。
液晶を見るとまた知らない番号。

携帯も一緒にトイレに流そうかと迷ったあげく、
結局電話に出てしまい、案の定覚えてもない男で、
それでも今夜と、約束までしてしまった。

あと数時間で
また誰かがやってくる。
その誰かに布団でも買わせようか。

せめてそれまではこの広い部屋を満喫しようと
ビール缶を口にして灰まみれになり、
口の中のエグ味に涙を滲ませて、
咳き込みながらも、なぜだか笑いが止まらなかった。

http://www.toca.jp/story/post_399.html
甲斐博和
2011.06.19