ピンク色のマフラーをぐるぐる巻きにした君は、
冬の花火ほど贅沢なものはないねと小さく笑った。
その横顔は時折明るく照らされ、低い鼻も、薄い唇も、
僕との喧嘩による寝不足で荒れた肌も、全て、ただ美しく輝く。
どうしようもなく退廃していくこの町が、
町起こしにと、旅館のそれぞれに出費を強制して
反感の声の中こぎつけた冬の花火は予想外に人を呼び、
ハワイ風にトチ狂った照明の海岸を、
金で買った椰子の木が並ぶ下を、
無駄に人で埋めていた。
僕等が住む狭苦しい団地とはまったく違う世界。
あの六畳半の世界で僕等は、愛について語り、語ることに疲れ、
優しさに飽き、信じていたものを零した。
それは誰が悪いわけでもなく、
時間と積み重なった生活がそうさせたのであって、
だからこそ僕等は諦める事ができたのだと思う。
子どもがいなかったのが幸いと君は言った。
僕は、
子どもがいたらもっと違う今だったのではないかと思ったけれど、
それを口にだすのはあまりにもあんまりだから、言わない。
花火は今や佳境で、沢山の出店に並ぶ人、
そこから香る肉や野菜の焼ける匂いの中、
大振りの柳のように火花はしだれ、落ち、粒になって、海に弾けた。
その度にわき上がる嬌声は、嘘で固めた娼婦の喘ぎ声のように泡と弾ける。
張りつめた冷たい空気にそぐわない、
灼熱の火花は数えられない程に落ちていく。
冬の海はどこまでも黒く暗く深く遠く、全てを飲み込むようで、拒む。
拒まれて蒸発する火花。点が、光っては消える、
僕等はそれをぼんやりと見ている。
ホタルを見たことがないはずの君が、
ホタルのようだね、と呟いた。
僕はそうだね、と返事をした。