よもやま

32才になる。

いつまでも20歳のつもりだったのに、いつのまにか32才になった。

今年は熱海で迎えることもなく、ギリギリの締切に泣きそうになりながら、
チオビタを一ダース用意して机に向かいながら新しい年齢を重ねた。

31才は怒濤のようだった。
映画を一本作り、上映があり、
そして日暮里に越し、さらに結婚。
人生のイベントが結構詰まった、濃厚な一年だった。

7月もあっという間で、中旬あたりに祖父の初盆に妻を連れて長崎大分熊本と
車でぐるぐる回ったり、土砂降りの雨の中軍艦島を見学したり、
ひたすらDVDを見たり、脚本書いたりで気付いたらじきに8月。
夏休みだったら完全に宿題終ってないペースだ。

ああ最近のDVDでは不貞の季節が秀逸だった。
海の家のなんとも言えない色味とぽかんとした時間。
きちんと存在している愛おしい人間達。

デスノートやダークナイトやパイレーツオブカリビアンなんていう、
いつもだったら観ないような大作も最近は分け隔てなく観るようにしているのだが、
やっぱり落ち着くのは、しみったりた人生を描くような、なんでもないけどなんでもあるような、
そんな映画にばかり心は動く。

それがマイナーかどうかは、時代と社会が決める事であってどちらでもよくて、
ただ、僕は僕の感覚に従うしかないのだと、最近よく思う。

一応抱負を立ててみる。
今年はとにかく、落ち着いて行動すること。
大胆に動き、穏やかに思考もする。

毎年となえている念仏のようだが、そう思うのだ。

それからなるべく沢山のことを許容すること。
大概のことはなんでもないのだから、
一々心にさざ波を立てないようにしたい。

本当に大切なことはとても少ないし、
それをきちんと大事にしていれば、あとはなんとかなるのだ。

一人でなく、二人としての人生を選んだ自分にびっくりするけれど、
何一つ不安は無い。

この充実した、新しい生活を延々と積み重ねることが、
どんな形であれ作品を制作し続けることに繋がっていく。

だからこそ、今目の前にあることを、いる人を、日々を、大切にするのだ。
その先には、年齢が増えれば増える程愛しさが増すような、そんな未来があるように思う。

そしてこの瞬間目の前にあるのは、まだあらすじしか出来てない脚本なのだった。
...作業できるのはあと二日。必要なのは75ページ。
何一つ計画的ではないスタートを切ったが、なんとなく間に合いそうなのは、
昼を回ってまだ熟睡している妻も含めたこの日暮里の静かな部屋での穏やかな生活が、
優しく、強く背中を押してくれているからだと思うのだ。


http://www.toca.jp/days/32.html
甲斐博和
2009.07.28